黄昏時に【黄昏こはくのブログ】

自分の好きなことを書く雑記ブログ

【創作小説】この指とまれ【ホラー小説】

夕暮れ時。黄昏時。逢魔が時

 

学校帰りの道をひとりで歩いていると、不意に風が吹いて、子どもたちの遊ぶ声が耳に届いた。

 

──鬼ごっこする人、この指とまれ

 

懐かしい遊びだなと思った。

声のしたほうへ、吸い寄せられるように足が向く。

気がつけば、錆びたブランコが軋む音がする小さな公園にいた。

 

そこで、ひとりの少年に出会った。

 

白いシャツにサスペンダー、帽子をかぶっている。

どこか古びた服装で、まるで昔の漫画の中から出てきたような風貌だった。

 

はじめまして、ぼくは黄昏だよ

 

にこりと笑う彼の目は、寂しげで、どこか懐かしい。

 

「一緒に遊ぼうよ。……ぼく、ずっと鬼なんだ」

 

彼はそう言って、にゅっと手を伸ばしてきた。

 

気づけば、あたりはすっかり薄暗くなっていて、街灯もついていない。

時計を見ようとしてポケットを探る。ない。

 

スマホもない。カバンもない。

ここは一体、どこだろう。

 

「早く逃げないと、捕まえちゃうよ?」

 

少年が笑う。
狂気を孕んだようなその声に、反射的に走り出す。

怖いのに、楽しい。

 

懐かしい道を駆け抜ける。

昔、よく遊んだ神社の裏手、空き家の脇の細い道。

どれだけ走っても、少年の気配はぴたりと背後に張り付いて離れない。

 

どこまで逃げればいい?

この遊び、どうやったら終わるんだっけ?

 

後ろから伸びてきた手が、私の腕を捕らえた。

 

「ああ、残念。捕まっちゃったね」

 

振り向いた瞬間、少年の顔が真後ろにあった。

笑っていた口が裂けるほどに開いて、目が真っ黒に沈んでいる。

 

 

気づくと、私は公園に立っていた。

あたりは夕暮れ。誰もいない。

 

はじめまして、私は黄昏です

 

口が、勝手に動く。 

 

 

──鬼ごっこする人、この指とまれ


私の声ではない声が、どこかで響いた。

 

次は、誰が来るのだろう。

また、あの夕暮れ時に。